生活保護問題対策全国会議による各政党への公開質問状が物足りない
生活保護問題対策全国会議とは、たぶん「反貧困ネットワーク」で知られるグループの一つだと思われます。もちろん、その活動には敬意を表するのですが、正直言って思想的には疑問符がつくのです。現に生活保護の必要性は非常に高まっているのに、この制度は今も誤解をされていますし、制度じたいも縮小されつつあります。これは国家や政治家のせいだけではなくて、当事者及び支援者たちの力量不足もあるのではと思うのです。
衆院選を前に生活保護制度についての質問状を公開することは意義はあるでしょうが、ピントのずれた質問もあります。この全国会議が文字通りに当事者や学者などから学んでいるとは思えません。残念ながら。
さて、質問は以下の12問です。
・貧困率の改善
・生活保護の捕捉率上昇
・水際作戦の根絶
・ケースワーカーの増員と専門性確保
・ケースワーカー業務の外部委託
・生活保護基準を2013年の段階に戻す
・級地の見直し
・夏季加算の創設
・一歩手前の困窮者への支援(一部扶助の単給化)
・扶養照会の原則廃止
・自動車所有要件の緩和
・生活保護世帯の子どもの大学等への進学保障
自民党、立憲民主党、社民党、共産党、れいわ新選組、国民民主党が回答しています。そのうち、全国会議は社民党、共産党、れいわ新選組の3党を高く評価しています。ケースワーカーの外部委託についてがバツで、その他はマルです。
全ての項目については述べませんが、まずはケースワーカーについて考えます。
全国会議の言うように、ケースワーカーの増員は必要なのでしょうか。
ケースワーカーの仕事をまとめます。
・保護の決定に関わること
・面接や家庭訪問
・就労支援
・病気や障害を持つ受給者の生活サポート
・自立を促す
その他もあるでしょうが、大きく5つです。
ケースワーカーが多忙だと言われますが、この原因はケースワーカー不足のためというより、業務が幅広いことが大きいでしょう。ケースワーカーは保護の決定などの業務に特化して、就労や自立はハローワークに、受給者の健康面は保健所が担当するのが合理的です。専門家ではないケースワーカーが就労や生活のサポートをすることが無茶なのです。また、業務の外部委託は論外です。ハローワークや保健所の人員は増やすべきです。
次に、生活保護基準を2013年に戻すのは賛成ですが理由として、現在ではインターネットやスマートフォンが生活必需品になっているために受給者の生活が通信費によって圧迫されているからです。だから、2013年よりも増額が必要です。
そして、一歩手前の困窮者支援ですが、これも最低生活費を引き上げることが解決への最短距離です。一部扶助の単給化は要件が複雑化するため困難か、不可能のような気がします。ただ、住宅費の扶助は地方自治体でもできることなので、特に首都圏などで低所得者への家賃のサポートはできるでしょう。
扶養照会については完全廃止でいいでしょう。
自動車所有は生活保護世帯には無理が生じます。税金、保険、駐車場、燃料を生活扶助から捻出する必要はありません。その代わりに必要に応じてタクシーチケットを支給すればいいのです。かえって安上がりだし、交通事故のリスクも減ります。
最後に子どもの大学進学ですが、今の日本では最低でも大学を卒業しないとまともに就職できないため、手厚いサポートは必須です。そもそも、大学に莫大な入学金や授業料を収めることが間違っています。欧州のように学費の無償化を目指すべきです。
最後に、福祉とは貧困者だけが受けるものではなくて、全ての人々に提供されるべきものです。そうでないと、福祉はお上からの施しやお恵みだと誤解されるでしょう。生活保護も例外ではなく、直接の受給者以外の人々にも利益があるものにすることで、生活保護受給者は恵まれているとか怠けているとかの偏見を解くことができるのです。その辺りの議論がほとんどないことは残念です。
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