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ベーシックインカム批判⑬ビッグイシュー(ホームレス支援団体)のベーシックインカム論を批判する

ビッグイシューは「ベーシックインカム(以下BI)を導入するメリットは、経済的な問題解決だけではない。国民のメンタルヘルスが向上、貧困、格差、社会的孤立が生む社会的課題を減らす」とイギリスの保健学教授マシュー・スミスが主張していることを取り上げていました。

マシュー・スミスを検索してもサッカー選手しか出てこないので、彼の目指すものが不明ではありますが。

ところで、スミスの言うメンタルヘルスとは何のことでしょうか。保健学教授なのだから医学的な話でしょうが、BIで解決できる問題でしょうか。

WHOによるメンタルヘルスの定義です。

メンタルヘルスとは単に精神障害でないということではない。それは、一人ひとりが自らの可能性を実現し、人生における普通のストレスに対処でき、生産的にまた実り多く働くことができ、共同体に貢献することができるという、十全にある状態であると定義されている」

WHOによれば、共同体に貢献できないことがメンタルを病むことらしいです。精神障害でなくても、社会貢献ができない人はメンタルに問題があるというのです。

果たしてそうなのでしょうか。メンタルを病むことイコール精神障害であってはならない理由がよく分かりません。気分障害双極性障害統合失調症、薬物などの依存症の方に必要なのは適切な治療のはずです。

社会貢献に主軸を置くと、そもそも就労できない人は置いてきぼりになります。精神障害に限らず、身体障害や知的障害であってもそうです。低賃金のために作業所で自分にムチを打ちながら働くことが「実り多い」とは思えません。

スミスはBI導入の目的を「すべての人の基本的ニーズを満たすこと」として、ワーキングプア生活保護の人たちのストレスがかなり軽減されるとしています。

しかし、これは論理の飛躍があります。

ワーキングプアには賃上げを、生活保護受給者には手厚い手当てを与えることで解決できます。BIによって、カネを受け取るスティグマが低減されると言いたいのかもしれませんが、それはBIが無くても解決できる問題です。生活保護制度には「門番」のような役人が必要だとも言いますが、それが生活保護制度を否定する根拠にはならないでしょう。

まず、BIが本当に全員に配られるモノでしょうか。日本であれば、外国人やホームレス、受刑者に配られることはまずあり得ません。政治家も役人も世論もそれを当然だと思っています。

また、BIは社会保障とは言えません。BIでトクをするのは中間層、経済的に豊かな人たちです。仮に、一人の生活を保証するのに15万円必要だとします。就労できない人には15万円支給されます。一方で就労して15万円の給料を貰える人はBIを合わせて30万円になります。これでは社会保障にはならないでしょう。

BIによって生活を維持するには、将来30万円必要となる可能性があります。また、15万円の給料もいずれ減り続けることになるでしょう。企業は給料を増やさなくても労働者の生活を守れるのです。つまり、企業にはメリットがかなりあるのです。

よって、メンタルヘルスのため、貧困の解消のためにBIを導入することは根本的な解決にはなりません。そもそもビッグイシューはホームレス支援団体ですが、一律給付金のときにホームレスの方々にお金は行き届いたのでしょうか。一部を除いては受け取れなかったはずです。BIが導入されても同じことです。BIは一部の人たちの熱狂的な支持はあるでしょうが、実は貧困を固定化することしかできないのです。

 

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