ブックレビュー「ある日の入管」織田朝日 「大丈夫。わかってる。国連も弁護士もNGOも、なーんにも力がないって」
織田朝日さんは、入管に収容されている難民の人たちを支援する活動をされています。17年以上も入管に通っているのです。この本は、主に織田さんが被収容者に面会をしたときのエピソードなどをマンガにまとめたものです。
このマンガは織田さんたちの闘いの記録と言えます。織田さんは入管の職員とたびたび衝突するのですが、それは被収容者が残酷な扱いを受けているからです。被収容者を手錠と腰縄で縛って歩かせたり、職員に反発すれば独居房(通称懲罰房)に閉じ込めたりします。ほとんど刑務所です。
日本人の多くは難民のことを正しく理解をしていません。難民が飛行機に乗るのはおかしいとか、お金を持っているのも変だとか。そうではなく、難民は戦争や内戦、政治的な問題などで身の安全のために飛行機で海外へと脱出するのです。(そうだ、難民しよう!という本を書いた、はすみとしこさんはご健在なのでしょうか?)中には脱出できずに命を落とす人もいるでしょう。そして運良く日本へたどり着いても入管へと収容されます。そこから祖国へと送られることは死を意味します。(難民を危険な地域に送り返してはならないとする国際法上の原則をノンルフールマン原則と言います)
この本で学べる一番重要なことは、織田さんたちだけではなく、被収容者たちも闘っているということです。彼らも自らの尊厳をかけて、集団で抗議をしたり、ハンガーストライキで待遇の改善を訴えるのです。
この日本では、たとえ永住権を得たとしても外国人は差別にあいます。トラブルにも巻き込まれる可能性が高いです。低賃金で都合よく働かされます。こんな日本でいいのでしょうか。これからは海外で働く日本人もさらに増えます。もちろん、日本で暮らし働く外国人も増えるでしょう。そんな世の中になれば戦争もきっと減ります。今の入管も解体されて、誰であれ収容されない世の中になるはずです。
今日もいつものように織田さんと入管職員が怒鳴りあっているのかもしれません。織田さんの怒りのエネルギーが熱く感じられるマンガです。冒頭のセリフ「大丈夫だよ。わかっている。国連も弁護士もNGOも、なーんにも力がないって」は被収容者から怒りのはけ口にされた織田さんが涙ぐみながらつぶやいた言葉です。6月20日は世界難民の日です。
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