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老老介護。その果ての殺人を美化するマスメディアを批判する

毎日新聞の記事です。2022年11月に夫が妻を海に突き落として殺害されました。被告は81歳、亡くなった妻は79歳です。その記事を抜粋します。

被告の口から何度も聞かれたのは後悔や謝罪の言葉だった。

…自ら妻を介護することへの強いこだわり…死ぬまで介護するつもりだった。

…近所の住民によると妻〇〇さんは「料理は美味しいし、夫が花に水をやってくれる」とよく嬉しそうに話していたという。

…「施設に入ると妻が苦しむと思い込み、自分で介護することしか頭になかった。施設に入所させて、2人で行き続けることが正しかったのだろう。でも当時はとにかく混乱していた。愛する人を、最後は嘘をついて殺してしまった。どんな刑になってもしっかりと罪を償いたい。そして、いつか外に出られるようになったら、真っ先に墓参りしたい」

この記事の抜粋を読んで、あなたはどう感じられるのでしょうか。毎日新聞はこの殺人事件を美化する意図が少なからずあるように思えます。被告を過度に同情をして、「介護者の支援体制を強化すべき。ケアマネジャーやケースワーカーをもっと配置しよう」というような社会資源の話にすり替えられるのが私には怖いのです。

老老介護の介護者が要介護者を殺す事件は時々見受けられます。2021年12月2日の東京地裁では、殺人罪に問われた82歳の女性に懲役3年執行猶予5年の判決がありました。要介護者の姉を窒息死させたのです。この事件の報道でもまた、涙なくては語れない美談にされたのです。私は殺人罪には何がなんでも極刑にすべきとは思いません。それでも執行猶予は甘すぎると思います。

こうした判決が続けば、要介護者は殺されても仕方ないという風潮が生まれます。老老介護に限らず、障害者の子どもも親に殺されても仕方ないとか、もっと言えば相模原事件の犠牲者たちも「仕方なく」殺されてしまうことになってしまいます。

私は相模原事件の教訓は絶対に忘れません。殺されてもいい生命はあり得ず、どのような理由があれ、生命の尊厳は守らなくてはならないのです。

今回の事件でも執行猶予がつく可能性は大です。しかし私は、事情はどうあれ、被告には同情する必要はないと思うのです。ハッキリ言えば、身体の不自由な要介護者を殺すのは卑怯と言えます。介護する側には重い責任があります。自分だけの手で介護ができないのなら、周囲に助けを求めることが必須です。メディアもこうした殺人事件の報道の在り方を見つめ直して欲しいのです。

 #老老介護殺人