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ベーシックインカム批判⑮ 日本刀でひげを剃るひろゆきさん

ひろゆきさん、成田悠輔さん、藤田孝典さんがAbema TVで討論…いや、馴れ合いでベーシックインカム(以下BI)待望論を展開していました。

よくわからないのが、福祉の論客のはずの藤田さんが「ひろゆきさんにも成田さんにも私は賛成なんです、てへっ♪」と愛想を振りまいていたことです。BIは福祉を全面的にカットして、現金給付のみとする政策ですよ。こうなれば藤田さんは真っ先に失業するのですが。

この番組でも「海外ではBIの実証実験が進んでいます!」と大ウソをついています。アメリカのシカゴ、ドイツ、スペイン、イタリア、フィンランドなどの「自称BI」は、くじ引きで受給者を決めた短期間の給付です。BIとは性質が異なります。要は失業給付の一種です。

ひろゆきさんたちはBIを「社会保障の大改革」と位置づけます。日本の社会保障給付費は約123兆円です。医療、介護、年金などが含まれています。そして、生活保護は約4兆円弱です。まあ、これらは毎年数兆円増加するので「大改革」は必要ではあります。ところでBIは日本の救世主となるのでしょうか。

仮に、1億2千万人に毎月10万円を配るなら年に144兆円が必要となります。社会保障給付費とほぼ同額なので、BIは実施可能かもしれません。そのかわり、医療、介護、年金、生活保護などは全て解体されます。国民皆保険も消滅します。そこまでしてBIを導入する意味はあるのでしょうか。

ひろゆきさんは、月7万円のBIを提案しています。7万円では東京の家賃で全て消し飛ぶのではとの疑問に、「地方に住めばいいのです。そして、中学校でバスケを教えるという生き方もできます」と言います。はい、これはよく使われる例えです。

つまり、お金にはならないけれども、自分のやりたい仕事がBIによってできる、ということです。スイスでBIの国民投票を仕掛けたシュミットはBI導入後の労働について「より自分のやりたいこと、自分の動機に従って…より自分の心に正直になって、自分のやりたい仕事ができる」と述べています。

一見、良いことじゃないかとも思えますが、別にBIがなくとも、週末に子どもたちにスポーツなどを教える人はいらっしゃいます。スポーツ以外でも美術や音楽、将棋、囲碁などを子どもたちと共に楽しむ人はいくらでもいます。BIの目指すものは、BIがなくてもほぼ実現しているのではないでしょうか。

ところで、社会保障の改革ですが、何よりも必要なものは「賃上げ」です。賃金が上がれば当然税収が増えます。子どもを産み育てる家庭も増えます。BIの欠点の一つは、賃上げを抑制することです。つまり、生活費が20万円必要だとして、BIが10万円配られれば、経営者は賃金を10万円だけ払えばいいのです。賃上げが期待できなければ税収も増えません。ゆえにBIの財源も乏しくなるのです。

また、給付金を巡った議論のみが政治のテーマになる昨今に危機を抱いています。〇〇党は10万円給付します!いやいや、〇〇組は20万円だ、いや〇〇会はもっと出す!といったものが「政治」と呼べるのでしょうか。まるでバーゲンセールです。

社会保障や福祉を改革するなら、10兆円あればお釣りがくるでしょう。BIが無くても少子化も貧困格差も解決できます。なのに144兆円のBIを導入するのは日本刀でヒゲを剃るようなものです。BIに意味があるとすれば、政治家や著名人が人気を取るための政策なのです。

シュミットがスイスでBI導入の国民投票を仕掛けたのが2016年ですが、BI賛成票は23%でした。圧倒的に否決されたのです。仮に日本で同じ国民投票をすればどうなるのでしょうか。賛成票はスイスよりは集まりそうな気はします。そのような事態を防ぐために、このブログでは引き続きBIについて考えていきます。

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