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「ひろゆき論」伊藤昌亮 岩波書店世界2023年3月号より。ひろゆきは「ネオリベ」なのか「ポピュリスト」なのか

ついに、と言うべきか「ひろゆき論」が雑誌「世界」に登場したのはちょっとしたニュースです。ひろゆきさんの社会への影響力は、凡百の(と言えば失礼ですが)政治家や学者、作家よりも遥かに大きく、その名は小学生にまで浸透しています。有名なフレーズ「これってあなたの感想ですよね」は、ガキンチョたちの口癖にもなっています。

伊藤昌亮さんは「ひろゆき論」に「なぜ支持されるのか、なぜ支持されるべきではないのか」という副題をつけています。支持されるべきではない、とはかなり踏み込んだというか、ハッキリと悪意のある言葉です。伊藤さんはツイッターにて、これを書くためにひろゆきさんの本を15冊書店で購入したこと、また、その平積みされたひろゆき本のスペースは、3年前にはいわゆる「嫌韓本」が占拠していたことを述べていました。「嫌韓本」ブームが消えたタイミングで「ひろゆき本」が台頭してきたというのは鋭い指摘です。ひろゆきブームもあと数年が賞味期限ではないかという予測はたぶん正しいでしょう。

さて、伊藤さんのひろゆき論は次の三つに解析されます。

プログラマーとしてのライフハック

②「ダメな人」のためのネオリベラリズム思想

③既存の知識人に反発するポピュリズム

ライフハック術を思考力に置き換えるというのは、なによりも効率と情報量を重視していることでしょうか。逆に言えば学問や、専門的な知識は軽視されるということです。特にツイッターやユーチューブでの「数打ちゃ当たる」的な物量の多い配信は彼の特徴を表しています。明らかに間違ったことを述べることも少なからずありますが、それを指摘されても「すいませーん」と撤退するだけです。今日も朝鮮学校卒はアメリカに留学出来ないという勘違いをツイートしていました。(国籍が北朝鮮であれば留学できませんが、学籍は無関係です)

ところで、ひろゆきさんは「ネオリベ」なのでしょうか。伊藤さんはその根拠として、ひろゆきさんが辺野古基地の反対運動の拠点に出向いて、明るくて天気もいいのに無人だったことを揶揄したツイートを、笑顔の写真つきで投稿したことを問題視しているのです。これには左派リベラル界隈では激震が走ったことでしょう。まあ、痛いところを突かれたと。

事実、現在では辺野古の座り込みは9時、12時、15時の1日3回に行われていて、土砂を運ぶダンプカーも律儀にその時間のみやって来るという「馴れ合い」になっています。(反対派がそうツイートしているのだから間違いないでしょう)。誤解なきように補足しますが、これは地元の住民たちに罪があるのではありません。反対闘争を支援する(本土の)人々が、熱意を無くしていったためです。それは戦略的なミスであり、長期化する運動の継続的な支援が途切れたのです。ぶちまけた言い方をすれば、本土の左派リベラルが全て悪いのです。

そしてひろゆきさんは、確かにポピュリストです。彼は誰でも「人生勝ち組」になれると強調します。それこそ、生活保護受給者も勝ち組だと明言します。単身の生活保護受給者も年150万円貰えて、60年だと9000万円ゲットできるのだから、ラッキーだと言うのです。たぶん、生活保護受給者のことをこれほどまでに前向きに評価する人は今までいなかったでしょう。本来なら左派リベラルがこれを言うべきだったと思うのです。

このように、ひろゆきさんは現状の左派リベラルがほぼ無関心な領域にまで関心を示すのです。だから、彼をネオリベとラベリングするのは少々危険です。従来の知識人からすれば得体の知れない相手でしょうが、敵対したところで得るものは少ない気がします。ひろゆきさんは「なぜ支持されるべきではないのか」と言う伊藤さんですが、そうではなく、積極的に関わっていくのが最善だと思います。支持するのかしないのかは、それぞれが決めることです。そして、ときには「共闘」することもアリです。泉房穂明石市市長がひろゆきさんとの共著「少子化対策をしたら人も街も幸せになったって本当ですか?」を出版したように、逆にひろゆきさんを利用するのです。

有田芳生さんがひろゆきさんと統一教会本を出版する予定だったのを(辺野古の件のため)断念したのは勿体なかったです。辺野古闘争の本を、ひろゆきさんにも協力してもらって出版するくらいに、懐の深さを見せつけるべきでした。

それにしても、久しぶりに「世界」を読みました。伊藤昌亮さんのツイートに触れなければ「世界」を買って読むことは無かったです。ウクライナ戦争、保育の貧困がそれぞれ特集になっています。これだけボリュームがあって850円+税は安いですね。

 #ひろゆき論 

 #岩波書店世界2023年3月号