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ベーシックインカム批判⑫橘玲のベーシックインカムねずみ算

橘玲さんの「無理ゲー社会」を読みました。その全体像については後日論じます。今回は「『よりよい社会』をつくる方法」の章でユニバーサルベーシックインカム(以下UBI)について述べていますので、これを取り上げます。(当ブログではUBIと BIは区別はしません)

橘さんは「UBIにはさまざまなメリットがある」と言う一方で「この制度の致命的な欠陥についてはほとんど議論の俎上にのぼることがない」それが「誰に支給するのか」という問題だと言うのです。まあ、私は当ブログ「ベーシックインカム批判」④⑨⑩で「誰に支給するのか」言い換えれば「誰に支給はされないのか」については論じました。

橘さんは、経済学者ジョージ・ボージャスの「福祉磁石(ウェルフェアマグネット)」を取り上げて、UBIを実施した国に移民・難民があちこちから集まるのでは、という危惧の念を抱きます。

ジャーナリストのアニー・ローリーは移民にUBIを配れば「反移民感情が深まる」と懸念します。その解決策は「答えは簡単には出ない。進歩主義者にとっては特に直視しづらい問いである」要は、その答えは分かりません、と言うのです。

という前置きの後、橘さんは「日本人はいくらでも増やせる」という「警告」を発します。たとえUBIを日本国民に限定しても(橘さんも在日外国人にはUBIを配らないことを前提にしています)日本人の子供は間違いなく日本人になれるので、それを最大限に活用します。つまり、日本人男性が外国人の若い女性と結婚して子供を10人産めば、10人分のUBIを受け取れるのです。

また、その女性と離婚して別の若い女性と結婚すれば、また10人子供ができます。そうして30人の子供ができたらその子が孫を産みます。すると孫の数は600人になります。それを繰り返せば皆が億万長者になるというのです。ねずみ算式に日本人が激増することになります。

橘さんは、こうした事態を避けようとすれば、誰が日本人で誰がそうでないのかを厳密に区別するしかないと述べて、それはまさしく「優生学」そのもので、人類史上もっともグロテスクな「排外主義国家」の誕生となるとおっしゃいます。

まあ、橘さんの心配は杞憂でしょう。ひとことで言えば、UBIは実現しないからです。日本に住む人々(国籍、民族問わず)を分断する政策が認められるとは思えません。また、UBIが貧困を解消するとも思えません。私の試算では、生活保護や年金、医療といった社会保障を全てUBIにしても、月5万円程度のUBIにしかなりません。本当に貧困を解消するなら、生活保護や年金を手厚くして、医療や学費を無償化するほうが確実です。そして労働者の賃金を上げることです。

橘さんのUBI論では、誰も取り上げなかった「UBIねずみ算」を危惧したことは画期的です。しかし、そもそもUBIは不要だという結論に導かれなかったのは不思議です。橘さんの「無理ゲー社会」については今後も取り上げる予定です。

 

#ベーシックインカム #橘玲