闘うブログ!レフティ中尾 社会派!

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ベーシックインカム批判⑤「小さな政府」か「大きな政府」か。

さて、この連載を簡単におさらいします。

①では、なぜベーシックインカム(以下BI)なのか、その背景に簡単に触れました。AIに仕事が奪われることへの危惧。BIの財源としての現代貨幣理論、つまりじゃんじゃん紙幣を刷ればいいという話。けれども、この二つ以外の論拠に乏しいのです。ただ、人間の「欲望」に訴えるので、日本でも支持者は結構います。

②では、BIの国民投票がスイスで行われたが賛成票23%と惨敗した原因を探りました。BI推進派の「成金趣味」が関係しているのが一因だと分析しました。

③では、AIとBIによって仕事の総量が減るのは本当なのかを考えました。AIにより専門的な仕事が「係員」に奪われる危険性があります。ただ、仕事の総量はさほど減らずにいるだろうと推測はしました。ただ、AIとBIによって資本にとっては巨大なビジネスになるでしょう。

④では、そもそも「全員」に配るのはムリだと批判しました。在日外国人や受刑者に配るのは多くの人が反対するでしょう。また、BIは国家から配られるので、私たちは必要以上に国家に服従することになる危険性にも触れました。

まとめに入る前に、BI推進派のドイツ出身のシュミットは、例えば日本でBIを月20万円配れば「今まで手にしていた給料や社会保障や年金などは月20万円分減るかもしれない」と述べています。ポロリと本音が出ているのです。BIが実施されたらその分たくさん商品が買えるというのではありません。

BIによって社会保障が制限されると、生活の保障は福祉ではなくて「自己責任」に委ねられます。BI推進派はこの点については何も語っていません。

また、「仕事の価値は収入にあるのではなく、他人がそこから得ることができる便益にある」とも述べています。逆に言えば、仕事では収入に期待せずに、「やりがい」だけを求めろと言うのです。そして「仕事と収入の分離」を訴えるのです。早い話、それらによって資本が「ぼろ儲け」するのです。

問題の多いBIの代わりに「大きな政府」を目指すのが現実的だと思います。つまり欧州型の福祉国家を目指すのです。これならばお手本にすべき国が現存しているので、さほどリスクはありません。そしてベーシックインカムの真逆の発想をするのです。それは「ベーシックサービス」です。

増税は必要ですが、国民負担率を欧州並みに引き上げて、医療、介護、育児、教育といった分野を無償化するのです。お金が配られても結局は自己責任とする生き方なのか、増税はあっても生活は保障されたなかで生きるのか。

ベーシックインカム「小さな政府」なのか、ベーシックサービス「大きな政府」なのか。大雑把ですが、この二択で議論をするべきです。その選択をするのはもちろん国民一人ひとりです。ここまで読んでいただいて心から感謝いたします。