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斎藤幸平さんに問う。①「マルクス解体」を解体できるのか

斎藤幸平さんの「マルクス解体 プロメテウスの夢とその先」を読み進めています。400ページに達するこの本は、元は英国で出版したものだそうです。斎藤さんはマルクス学者として名を馳せていて「人新世の『資本論』」は大ベストセラーになっています。

斎藤さんの唱える思想をひとことで言えば、マルクス主義エコロジー思想の融合です。思うに、その思想は新しいモノとは言えません。1970年代から欧州を中心に誕生した「緑の党」ブームがありましたが、その思想には少なからず、マルクス主義の影響があったのです。日本にも1980年代に緑の党が複数誕生しましたが、いずれも数年で消滅したのです。何故なら都会に住みながらエコロジーを唱えても、説得力が無いのです。

しかし、欧州では今でも緑の党は支持されていて、連立政権に参加している党もあります。斎藤さんの思想が欧州でも席巻している理由がよく分かります。

さて、私は斎藤さんの本の熱心な読者であり、コミュニズムの信奉者でもありますが、その「脱成長コミュニズム」を未だに消化出来ずにいます。まあ、私の理解力が乏しいことが主な原因ですが、それに加えて「脱成長」はすでに実現しているのではないか、あるいは完了されているのではと思うのです。もはや「成長」なんて、やりたくとも不可能なモノです。この地上は、極限まで資本が集中して、格差が拡がっているのですから。「脱資本主義」と言うのなら話は分かりますけれど。

2021年3月7日の毎日新聞で、斎藤さんの連載記事が掲載されています。「資本主義の先へ レッツ脱プラ生活 『不便』と向き合う体験」というタイトルです。生活の中のプラスチックをできるだけ減らすことを実践するというモノです。野菜や魚や肉などのプラスチックやビニールの包装のあるものを一切買わずに生活をするのです。但し、15日間の限定です。正直、酷くつまらない記事でした。

どのような内容かは、安易に想像できるでしょうから省きますが、ひとつ取り上げると、マイカーを20分運転をして、お菓子工場へ行って量り売りをして貰うとか、どこがエコロジーなのか理解できません。(そのお菓子工場からは結局量り売りを断られています)。「人新世の資本論」の冒頭で「SDGsは大衆のアヘン」と言い切ったお人は別人だったのでしょうか?

また、先日のテレビの番組にて斎藤さんはこう発言しています。番組は私は見損ねたのですが、幾人かの方がTwitter(X)で書き起こしています。引用します。

「……国民の皆さんには来年の6月に4万円減税するけれど、その一方で自分の給料を4000万円貰っている岸田さんが自分の給料を更に40万円上げますよと言ったら、やっぱり納得感としてちょっと難しいと思うのですよ。

その上で、れいわは一律給付を季節ごとにやるとか、軽減税率を引き下げるべきとか社会保障料を引き下げるとか、即効性があることを求めている中で(岸田総理が)自分の給料だけは上げると言うのは、ここは問題です」

まず事実として、岸田さんは年収の3分の1にあたる1218万円を国庫へ返納すると約束をしたばかりです。また、2021年のコロナ禍でも給与の一部を返納しています。

斎藤さんがれいわ新選組を評価しているのは知りませんでした。れいわは確かに消費税の廃止を訴えています。疑問があるのですが、消費税を廃止すると、そのぶん商品が値下げされるという保障はあるのでしょうか。つまり、税込み110円の商品は間違いなく100円になるのでしょうか。価格を決めるのはお店ですから、一時的に値下げをすることはあっても、それは継続されるとは限りません。また、消費税廃止がインフレや円安の要因となり、さらに低所得者の生活が苦しくなる可能性すらあります。

もちろん、消費税減税や廃止がきっかけとなり、景気が上向きになる可能性もゼロではありません。ですが、運良くそうなったとしても、低所得者が報われることにはなりづらいでしょう。これなら消費税を回収した上で、低所得者にそれを還付する方が確実です。あるいは賃上げを求めることこそ最も大事なはずです。

何故斎藤さんがこうした大衆受けしそうなことをおっしゃるのか理解できません。斎藤さんは政治家ではなく学者なのだから、人気取りは不要なはずです。正直ガッカリしています。

今回は前置きだけでしたが、「マルクス解体」を読み進めて、それと格闘していく予定です。私は学者ではなく一読者です。しかしそのタイトルからは非常に危険な匂いがします。マルクスの再評価のきっかけを作った斎藤さんが、どうマルクスを「解体」するのかを考えると、少々身震いするのです。

 #斎藤幸平 

 #マルクス解体