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斉藤幸平さん、ラジオで語る。欧州にて「脱成長コミュニズム」は栄えるのか

夜間、ボケーっとNHKラジオを聴いていると、斉藤幸平さんが登場したので驚きました。「フューチャーダイアログ」という企画で、これが5回目だそうです。うわっ、知らなかったぞ。

言わずと知れたマルクス学者の斉藤さんの声に、思わず布団から抜け出して、筆記具を用意して、そして正座をしました。ヨーロッパの右派と左派、そしてポピュリズムがテーマのようです。

私の感覚では、欧州の右派と左派はかなり先鋭的な印象です。日本の右派と左派はつまるところ、単純な減税政策に迎合するところがあって、その両者の境界線がハッキリせずにいるのです。一方欧州では移民の方々が大勢住んでいることから、彼らに対する立場を決めることが大事なのです。つまり、移民に寛容なのが左派で、移民を排斥しようとするのが右派です。それに比べると、日本の共産党と維新の会との政策の差異なんて、微々たるモノです。

斉藤さんはスロベニアの総理大臣で自由民主党中道左派政党と思われる)の党首でもあるゴロブ氏の発言を取り上げます。再生可能エネルギーや電気自動車に投資するだけでは気候危機対策には足りず、牛肉を食べることも一切やめても足りない、もっとラディカルに消費のパターンを変えないと、取り返しがつかなくなる、と。日本の環境保護運動家よりも、かなり踏み込んだ発言です。家畜の出す二酸化炭素を無くそうと言うのですから。

そうした自然との共生と、生活に必要な資源の共有化や無償化を目指すことが斉藤さんの言う「コモン」なのです。ゴロブ氏も斉藤幸平さんの著作を読んでいるのかもしれません。

それにしても、斉藤さんの「脱成長コミュニズム」が欧州にも影響を及ぼしているのは驚きです。その理由は多分、日本と欧州のコミュニズム観が大きく異なることにあるのです。日本ではコミュニズムとは旧ソ連北朝鮮のイメージが強いのですが、欧州では社会主義とはフランスが発祥の地なのです。だから、ベルリンの壁が崩壊しても、旧ソ連が解体されても欧州のコミュニストはさほどダメージが無かったのです。

斉藤さんが「共産主義」と言わず「コミュニズム」と言うのはそれを払拭したいからでしょう。また、斉藤さんが日本共産党との繋がりを一切持たないのも、おそらくは、それが理由なのです。日本共産党は表向きでは旧ソ連を否定していても、深いところでは無意識であれ、旧ソ連の呪縛が解けていないのです。

ラジオでは触れていないのですが、斉藤さんの著作に出てくるマルクスの環境危機「予言」がずっと気になっていたのです。「大洪水よ、我が亡き後に来たれ!」です。どこかで読んだことがあるなと。これを斉藤さんは、マルクス地球温暖化によって陸地が水没することを警告したと解釈しているのです。本棚を探すと案外早くそれを見つけました。日本評論社による「講座マルクス経済学第6巻、コメンタール『経済学批判要綱』(上)」です。かなり以前、古本屋で100円とかで手に入れて読んだものです。この本では、マルクスからエンゲルスへと宛てた手紙を引用しているのです。孫引きで申し訳ありません。

「僕は毎晩、夜を徹して、気違いのように、経済学研究の取りまとめにかかっている、大洪水(恐慌)の来るまえに、せめて要綱だけでもはっきりさせておこうと思ってね」

(恐慌)は執筆者である山田鋭夫さんによるものです。マルクスは1857年12月にこの手紙を書いたのですが、この年に史上初の世界市場恐慌が猛威を振るったのです。だから「大洪水」とは陸地が水没することでは無くて、「大恐慌」のことです。少なくともこの手紙では。

斉藤さんのおっしゃるように、マルクスが地球環境の未来を憂いていたことはあったのでしょうか?実際、マルクスエコロジーを結びつける思想は古くからあるのです。日本では1980年代に「緑の党ブーム」があって、たしか複数のグループが「緑の党」を名乗っていました。そしてそれらは数年で消滅したのです。都市部で生活をしながらエコロジーを掲げることが矛盾しているのです。そりゃ支持はされません。

斉藤さんもまた、毎日新聞の連載企画で、エコ生活をする体験記を書いていました。それはエコバッグを利用するのはもちろん、プラスティックで包装した商品は一切買わずに生活するモノです。酷くつまらなかったです。どんな食品も収穫されてからトラックや船で運ばれるのだから、都会に住む限りエコ生活は無理です。田舎に住んで、自給自足の生活をするのならともかく。

話が少々ずれましたが、その緑の党ブームの前には、まもなく氷河期が到来するという話が流行っていました。1970年代です。このように、近未来の「予言」なんて当てには出来ないものです。だから19世紀のマルクスが仮にエコロジストだとしても、21世紀の時代を憂うことはあり得ません。だから地球温暖化に備えることが無意味だと言いたいのではないのですが。

と言うか、ポピュリズムの話はどこへ行ったのでしょうか?私が聞き漏らしたのか、斉藤さんが忘れたのか。まあいいか。日本の政治家はポピュリストばかりでウンザリです。彼らは「減税」しか言うことが無いのでしょうか。小さな政府しか選択肢が無いとすれば、それは悲劇ですよ……。

 #斉藤幸平 

 #脱成長コミュニズム