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ブックレビュー 「痴漢外来 性犯罪と闘う科学」 原田隆之 刑罰+治療で性犯罪への抑止力を

さまざまな「依存症」を扱った本は増えていて、読み応えのあるものが多いのですが、「性的依存症」を治療する精神科医が書かれた本は他に知りません。女性、男性問わず必読の書です。

「痴漢外来」と看板が出ているのではないでしょうが、その精神科は東京都心部の駅前にあるそうです。そこに通院される方は痴漢、盗撮・のぞきが7割以上を占めて、他には過度な風俗店利用や浮気、露出などがあり、下着窃盗、小児性愛、強姦もあります。風俗通いと浮気は別として、他は性犯罪です。

普通の感覚、価値観では性犯罪者には重い刑罰を与えればいいだろう、それが性犯罪抑止力になる、と考えるでしょう。しかし、原田隆之医師は厳罰化だけでは性犯罪は減らない、それだけではなく、「治療」も必要だと考えているのです。

さて、偶然見かけたツイートで「日本でも性犯罪者へのGPSの取り付けが検討されていて、2008年に義務化された韓国で性犯罪が8分の一に減ったが、監視によるストレスで48人が自殺した」との出所不明の記事がありました。性犯罪が本当に減ったのかはともかく、刑務を終えて出所した人にGPSという烙印を押してしまうと、家族も去り仕事にも就けなくなるだろうから、むしろ孤立して再度犯罪に向かうことになるでしょう。

そう書くと、「犯罪者の人権じゃなくて、大事なのは被害者の人権じゃないのか」と反論がくるでしょう。でもそれは天賦人権説を無視しているし、現にGPSによる監視が再犯抑止になるという明確なエビデンスがないと思うのです。

その「痴漢外来」での治療について全ては書ききれませんが、そのなかでも強烈にインパクトがあったのは、痴漢であれば、満員電車には一切乗らない。盗撮であればスマートフォンのカメラレンズを破壊する。といった物理的な対処です。「自分の意思には頼らない」ことが性依存症の対処なのです。

念のためですが、著者は性犯罪の被害者を軽視しているのではありません。最後の章で書かれていますが、著者も性犯罪被害者に接して、世の中が性被害について無関心であることを放置できないと述べています。

 

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