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ブックレビュー「誇りと抵抗」アルンダティ・ロイ①アメリカとイギリスのコールセンターはインドにある?そしてナルマダ渓谷における非暴力の戦い

インドの作家、アルンダティ・ロイの本です。20年近く前の本です。内容が多少古いので、現在のインドと食い違う点もあるかもしれません。それでも非常に読み応えがあるので数回にわけてレビューします。

インドの大規模なコールセンターですが、日本のそれとはスケールがかなり異なります。若くて英語が堪能なインド人が訓練を受けます。そしてアメリカやイギリスから問い合わせの電話に応えるべくスタッフになるのですが、その際、電話をかけてきた相手に、応対しているのがデリー郊外に住むインド人であることを絶対に悟られてはならないのです。

アメリカの英語やイギリスの英語の正確な発音をマスターして、世間話ができるようにその国のニュースも知り、仕事中は本名を使わずに米英風の名前を名乗るのです。例えば、スシュマはスージーに、ゴヴィンドはジェリーに、アドヴァニはアンディになります。インドにおける一つの「腕」です。

もう一つのインドの「腕」は民族奉仕団(RSS)です。そこでも若者たちは学ばされます。核兵器の備蓄、宗教的偏見、女性蔑視、焚書など。純然たる憎悪こそが、国家の尊厳を取り戻す方法だと教えられます。それはテロリズムや戦争を産み出すかもしれません。

この2本の腕が相乗作用で動きます。片方の腕がインドの若者たちを米英に売り飛ばします。そしてもう一つの腕は、国民の目を逸らすため、騒々しいヒンドゥーナショナリズムの大合唱を指揮します。まるで正反対のことをしているのに、その2本の腕は引き離すことはできないのです。

そして強圧なインド政府は第3の「腕」ナルマダ渓谷を開発します。大規模ダム30、中規模ダム135、小規模ダム3000。世界でもっとも大掛かりな民営の流域開発プロジェクトとなります。「美しい川のほとりで、激しくも不可思議で、荘厳で、粘り強く、なによりも非暴力の抵抗が生まれた」その地で、それと戦う唯一の方法を語るのです。「特定の方法で特定の戦争を戦うこと。そんな戦いをはじめるのに良い場所、それがナルマダ渓谷だ」

ナルマダ開発はその後中止となりました。現在、ナルマダ渓谷は美しく壮大な川の流れを保っているのでしょうか。調べましたが分かりません。インドについては、もっと注目されてもいいはずです。ロイについては、また後日執筆します。

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