どういう訳か社会保障や高齢年金を忌避する人が非常に多いようです。
2025年10月26日の読売新聞朝刊にて、「成長戦略としての社会保障」という権丈善一慶応大教授へのインタビュー記事が載りました。そのタイトルを紹介したに過ぎない読売新聞編集委員会のX(Twitter)が派手に炎上したのです。
その記事を読むために読売新聞を購入しました。その内容は小難しいことではありません。つまり、社会保障にとって大切な指標は年齢ではなくて、就業者数と非就業者数の比率で、これは戦後から現在、未来においてさほど変わらないということです。いわゆる肩車型は昔も今も同じなのです。
そして、社会保険は再分配であり、「垂直的再分配」(高所得者から低所得者へ)、「保険的再分配」(生活のリスクを負った人へ)、「時間的再分配」(高齢のために必要な人へ)というように暮らしを支えるのです。
要するに、社会保障は良くできた制度なのです。余程のことがない限り、社会保障は揺るぎません。ただし、社会保険料を皆が納めることが大前提ですが。
よく聞く話では、高齢者になるまでに2000万円貯める必要がある、と言われますが、そのことは少なくても40年前からあった話です。専業主婦が普通で、働く高齢者もさほどいなかった時代と現代では就業者数も単純に比較はできません。たとえ2000万円を貯められなくても生きていけるのが社会保障です。
だから問題は、社会保険料ではなくて賃金なのです。賃金が順調に増えれば社会保険料もそのぶん多く納めることができます。社会保険料や所得税、消費税などを下げたとしても、一時凌ぎにしかなりません。どういう訳か、右派も左派も社会保険料や税金を毛嫌いしていて、これはもはや「洗脳」されているのではと、疑うのです。
だから私は今話題の「給付付き税額控除」には必ずしも賛同できません。この実現には年に数兆円単位の予算が必要となります。低所得者に税が還付されていいじゃないか、と安易には考えられないのです。
この政策やベーシックインカムもそうですが、企業が賃金を抑えることになるのに私は警戒するのです。企業は生活に充分な賃金を払う責務があって、それが出来なければ淘汰されるべきだと考えます。生活が苦しければ国に言え、政府に頼めというのが健全とは言えないでしょう。社会保険料や税金に文句を言っても根本的な解決になるのでしょうか?
権丈さんのおっしゃる経済成長とは、たぶん所得倍増のような無茶な話ではありません。社会保障が成長戦略というのは、皆が賃金で食べていける当たり前の社会を築くということです。残業したり休日にも働かないと食べていけないとか、金曜日の深夜にウーバータクシーを運転しなくても、生活ができるという当たり前を実現するのです。賃上げこそ成長戦略となり、社会保障が整備されているから、安心して働けるのです。
最近では大企業でも、今まで禁じていたダブルワークを推奨するという理解しがたいことになっています。「わたくしどもは従業員の給料を満足には払えません」と言っているのに等しいのです。繰り返しますが、だから社会保険料や所得税を減らせ、消費税も下げろと言い出すと、未来の自分や将来世代の首を絞めることになるでしょう。社会保障を軽視すれば将来的に生活が行き詰まることになるのです。
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