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闘う書評!フロム「愛するということ」④「自己愛」は悪いモノではなくて、むしろ大切な訳

心理学的な用語で「自己愛」ほど誤解されている用語はないでしょう。「自己愛性パーソナリティ障害」という病名まである位ですから。

ところで偶然YouTubeで、カウンセラーTさんが自己愛について語っていました。「毒親」の専門家らしいのですが、Tさんご本人を守るため匿名にします。

Tさんはとにかく、自己愛の人に対して容赦がありません。

・自分の非を絶対に認めない

・単純思考だけで生きている

・私は正しいが大前提

・人の気持ちを決めつける

・本当はベビーちゃん

・人の気持ちを思いやることが一度もない

・そもそも人間は一人ひとり気持ちや感情があるのを考えたことがない

・おんなじ人間なのにそんなことありえるの?ありえるんです

・自分自身の感情を感じてそれを認知する神経回路が完全に壊れている

・シャットダウンしていて全てを左脳の思考で処理している

・自分は正しいと思い込んで自分の非を一切認めない

延々と13分間この調子が続くのですが、視聴を続けるのが流石に嫌になりました。

「絶対に」とか「一度もない」とか「完全に壊れている」といったフレーズはカウンセラーのものとは思えません。人間の心理や人格は単純なものではなく、無意識の中で隠されて存在している、氷山のようなものですから。

ところでフロムは「自己愛」と「利己主義」を異なるモノと論じます。自己愛を肯定するのです。

「自分自身の人生、幸福、成長、自由を肯定することは、自分の愛する能力、すなわち気遣い、尊敬、責任、理解(知)に根ざしている(略)もし他人しか愛せないとしたら、その人は全く愛することができないのである」

では「利己主義」とは何か。フロムによれば、自分を愛しすぎるのではなく、自分を愛さなさすぎるのです。Tさんは「自己愛」の人が不幸を撒き散らすと考えていますが、実は一番不幸なのは「利己主義」の本人です。

フロムは中世ドイツの神学者エックハルトを引用しています。

「自分を含め、あらゆる人を等しく愛するならば、彼らを一人の人として愛しているのであり、その人は神であると同時に人間である」

自己愛は必要です。また、自己愛がなければ他人をそして世界を愛することはできないのです。

 

#フロム #愛するということ