毎日新聞2021年3月30日、柿沢未途の「再分配型ベーシックインカムを適切給付のためデジタル化急げ」を読みました。政治家にとってはベーシックインカム(以下BI)は口当たりが良い政策です。国民からすれば、少なくないお金が無条件で降って湧いてくるように思えるため、あえて反対する人は少ないでしょう。
この記事では柿沢さんは格差社会の解消のためにBIが必要だとしています。つまり、マイナンバーで全ての預金口座に紐付けをして、「負の所得税」としてBIを配るというのです。資産や所得の多い人からは徴税して、そうでない人にはBIを手厚く配るという、少々面倒なシステムです。
全ての国民にとって公平なBIがあり得るのかという疑問がまず浮かびます。例えば、単身者に月10万円のBIを配るのと、5人家族に月50万円のBIを配るのは公平といえるのでしょうか。5人家族が、単身者の5倍の生活費が必要とは思えません。
また、月収10万円の給料がある人に月10万円のBIを配るのと、高齢者や障害者のように就労不可の人に月10万円のBIを配るのとは公平なのでしょうか。このように、BIが格差社会を解消するというのは、かなり無理があります。
単純な話ですが格差社会とは低賃金がもたらすものです。政治家が本心から格差是正を目指すなら、賃上げこそ訴えるべきです。BIを賃上げの代わりに置き換えると儲けるのは資本です。その結果、格差はむしろ拡がるでしょう。
柿沢さんは生活保護の実効性についても批判しています。ならば、本当に必要なのは生活保護制度の改良です。月に10万円のBIをすれば約13兆円必要です。一方で生活保護は現状月に約3000億円ほどです。生活保護の補足率を100%にしても1.5兆円で済みます。
柿沢さんのBIは、本来シンプルな制度であるはずのBIを複雑化させたものです。これを公平な仕組みとするのはかなり困難です。そもそも、お金を刷りまくってインフレにすれば困るのは低所得者です。BIほど国民に誤解されている制度も他にはないと思うのです。最後まで読んでいただきありがとうございます。