社会保障を欧州並みにするための二つの条件
コロナ禍では悪いことばかりではなく、語弊のある表現ですが良くなった面もあります。
まずは手洗い、消毒、マスク着用といった衛生面への意識が高まったことです。この冬ではインフルエンザの話を聞かないと、知り合いの医療従事者が言っていました。
もう一つ、経済的に困窮する方々が増えて社会保障、とりわけ生活保護への関心が増えたことです。識者の中には日本の生活保護と欧州の制度を比較している方もいます。
ただ、彼らは欧州で何故手厚い社会保障や生活保護が実現できるのかが分かっていないようです。
一つ目の条件は国民番号制度です。日本ではマイナンバーが導入されています。ところがマイナンバーが国民のプライバシーを監視するのではという誤解があって、導入に批判的な意見があります。
国民番号制度はそもそも徴税や社会保障の給付などを効率的かつ確実にするメリットがあります。脱税や社会保障の不正受給を防ぎます。
また、日本の金融機関の口座には誰のものかはっきりと分からない資産が眠っています。それが脱税の温床となっているため、口座の紐付けは必要なのです。
二つ目の条件は消費税です。EU諸国では消費税を15%以上にするよう定められています。これは庶民を懲らしめるためではありません。「高福祉高負担」社会の実現のためにあるのです。
欧州では医療費や学費などが無償の国があります。老後の不安もいりません。そもそも消費税とは大きな政府、社会民主主義的な左派の政策です。日本ではあべこべに自民党が消費税の増税を牽引しています。消費税を今すぐ上げろとは言いませんが、アメリカ、日本型の「低福祉低負担」政策を継続するのか、欧州型の「高福祉高負担」政策に切り替えるのかという根源的な議論はするべきでしょう。